メインコンテンツ:書評(経済、科学関連) 管理者:山内篠
【書評】ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

 この本はTOC(制約条件の理論)と呼ばれる生産管理手法の教則本なのだが、理論の提唱者による小説という極めて珍しい形態をとっている。私も以前にTOCの本を読んだが、それほど理解できたとは言いがたかった。しかし本書を読んで、驚くほど理論の意味と実践例がスラスラと飲み込めていった。たしかに現実にここまで見事に適用できるか不明ではあるし、多少は恣意的な部分があるかもしれないが、それでも他の難解な教則本を読むよりは最初にこれを読んだほうが理解は速いと思われる。

 TOCの要旨は非常に単純であり、工場の全体の生産性はボトルネックとなる工程により支配されるというだけのことである。この本に出ている例であげれば、隊列のスピードは一番歩きが遅い人間によって決定されるということである。これは小学生でも思いつきそうな話である。ただし、生産管理の改善をこのボトルネックの解消という行為にのみ集中するとなると、話は変わって決して当たり前ではない結論が次々と出てくる。在庫管理、品質検査、作業時間などをすべてこのボトルネックを基準にして最適化することで、生産管理が大きく向上するということがTOCの要点である。TOCが導入される以前ではボトルネックのことを考えずに個別に最適化を行うのが常識であった。

 この本の終末で著者はTOCを生産管理にとどまらない改善のための思考プロセスとして用いることを提案している。もしかしたら著者の思いもつかないところで、この考えが適用できる分野もあるかもしれない。
 もうひとつこの本の特筆すべき事項として、小説という形態の有用性が感じられたことがある。難解な理念も具体例を想像して掘り下げて書くことで他人に伝わりやすくなる実例を、この本を読んで私は初めて感じた。

テーマ:書評 - ジャンル:本・雑誌