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【書評】新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く

 因子が複数集まった系を学問として扱うのは本当に難しい。物理では相互作用する因子が三つ集まっただけで、厳密な解を求めることがほぼ不可能になってしまう。熱力学も本来はニュートン力学に還元できるはずなのだが、実際には別次元の難解極まりない扱いを行わなくてはならない。「More is different」という言葉にあるとおり、「多」が生み出す「異」の難解さ故に、近代になっても科学者は研究の種が尽きない。特に基礎的な数学的取り扱いが二十一世紀になった今でさえ確立していない分野(下記)があるというのは驚きで、数学者は感謝すべきである。

『新ネットワーク思考』では複雑系と呼ばれている、インターネットのように複雑に絡み合うシステムを扱う分野について論じている。著者のバラバシは数学者で「スケールフリーネットワーク」という概念を近年初めてこの分野に導入した人物である。
 本書のテーマでもあるスケールフリーの意味は、関数の形状が常に同じということであり、つまりそれはベキ法則のことである。もう少し具体的に説明すると、ある要素(ノードと呼ぶ)のリンク保有数のヒストグラムは関数y=x^(-α)と同じ形状になる。ここから派生して多くの事実が述べられる。まずスケールフリーネットワークが形成される条件は以下の二点だけである。

・ 新しいノードが系に段階的に加えられていくこと
・ 新しく加わったノードは、すでにたくさんのリンクを持つノードに対して、高い確率でリンクを張ること

 まさしくインターネットのイメージそのものである。そしてスケールフリーの概念がもたらす一番重要なことは、ハブがネットワークを支配するということである。上記の関数で言うとx=0近傍に多量に分布するわずかなリンクをもつノードを、x>>0の位置にわずかに存在する多量のリンクを持つノードが支配しているのである。このリンクを多量にもつノードをハブと呼ぶ。これもインターネットのイメージそのものである。我々は多くの場合ポータルサイトや検索サイトなどのハブとなるサイトを使ってブログを行き来するわけであり、つまりインターネットはハブが支配しているのである。これが、googleなどの新興企業に大きな注目が集まり莫大な投資が行われている理由であろう。

 皆インターネットのハブの地位が欲しくて欲しくてしょうがないのだ。現在のインターネットはコロンブスが発見した当時のアメリカ大陸のようなもので、世界中の人間が血みどろになって新大陸のハブの地位を手に入れ絶大な権力を手に入れようとしている。近年までは情報のハブの代表は例えばテレビであり、実際彼らが世の中をある程度支配して独占的な利益を享受してきた。これからはインターネットのハブの地位を手に入れたものが、同じように世の中を支配していく可能性は十分ある。というより、すでにそうなりつつあるのかもしれない。

 スケールフリーの概念は別にインターネットのみに通用するものではない。社会、生物、言語、人間関係、あらゆるものに当てはまるケースがあるだろう。日常の中で、何がスケールフリーネットワークを形成しているのか、また何がハブの働きをしているのか考えてみるのもまた面白いかもしれない。

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